シンプルなデザインの種類

デザイン・制作

ものを創る時に、お客様とお話していると、よく「シンプルなデザインにしたい」とのご要望を受けます。シンプルなデザインを考えるというのはとても難しいと、いつも思います。

「シンプル」を辞書で調べてみると、「単純なさま」「飾り気やむだなところがなく簡素なさま」とあります。デザインでは「削ぎ落としたデザイン」「現代的なデザイン」なんて呼ぶことがあります。

 

ボクの考えるシンプルなデザインについて、前職のドアのプロダクトデザインで考えてみます。形状をいくつかに分けると「形状のシンプル」「必然のシンプル」「シンプルを狙った装飾」「装飾」となります。窓のあるドアで考え、ドアの本体の中に窓がセットされているという状態を例にします。

 

A:形状のシンプル

一枚のドアに、縦長のガラスを窓としてセットします。しかも窓のカタチは上下一貫されたシンプルなものです。手掛けはドアの先端を持つことにします。すると言い訳のないシンプルな形状ができ、これが形状のシンプルだと考えます。

B:必然のシンプル

ドアに窓をセットするのですが、そうはいっても物理的にガラスを保持する額縁が必要です。また、実際には手掛け部分には握りやすいハンドルが必要です。こういった、組成に必要なもの、機能的に有意義なものを集めて、それだけで組成したものを必然のシンプルと考えます。

C:シンプルを狙った装飾

必然のシンプルは、機能的なシンプルではあるのですが、ドアの場合、これだけでは商品が売れないことが多いです。このため、商用性を考えた装飾を考えます。ドアであれば木板を並べたデザインがよく売れます。この木板の装飾も、上下一貫・左右幅均等として見た目のシンプルを狙っていきます。さらにその木板でガラスを保持する額縁機能も兼ねさせて、Bではノイズであった額縁を削除します。こういった、装飾をかけつつそれをシンプルに近づけるものを、シンプルを狙った装飾と考えます。

D:装飾

窓ガラスに、意図的にアクセントとして装飾を付与していきます。装飾には、シンボル的な表現、親しみやすさの表現、憧れや誇りを表現する、といった意味合いや楽しみがあります。こういった意図的に装飾を計画したものを、対義として装飾的と考えます。

 

何もかもそぎ落としてシンプルを狙うと、素材の質やディテールが極めて重要になります。例えば、銘木の無垢材でドアを作った場合、形状のシンプルは成り立つと思いますが、いつでもそんな予算を組める訳ではありません。また、組み付け部品や使い勝手上利便的な部品がどうしても必要になります。

従ってシンプルとは、必要な機能性や装飾性も残しつつまとめるという形になります。この取捨選択の判断が、完成度の高いシンプルを創っていくと考えます。

 

デザイン実績:Aは形状のシンプルに近いデザイン、表面はタイル素材。Bは必然のシンプルに近いデザイン。Cはシンプルを狙った装飾に近いデザイン

Posted by tkdesign